らんま1/2リレー小説「乱馬に妹!?」

SIGの参加者が書いた、らんま1/2のリレー小説です。フォーラム#4へアップロードされていたものの転載です。


第1話 written by 紫音麻
其の弍 written by ねこ
其の参 written by あかねのいちふぁん。
其の四 written by うめりん
その五 written by SAKI


#6051/6052 るーみっくわーるど
★タイトル (QGD83181) 91/ 4/13 21:21 (136)
リレー小説>「乱馬に妹!?」(仮) 紫音麻 (138Line)
★内容

            ( 第1話 (1) )

 春一番も吹き、桜舞い散り日に日に暖かくなってきた今日この頃、そん
な日の昼下がり、また、いつものように・・・。

「こら、Pすけっ、待ちやがれー!!」
「ぶぎっ、ぶぎっ」

 廊下をPちゃんを追って走って行く、ずぶ濡れの乱馬。

「観念しやがれ」

 追いつめられるPちゃん。
 その時……。

「乱馬っ、いい加減にしてよ、また、Pちゃんいじめてーっ、かわいそうでしょ……」

 見るに見かねてあかねが駆けつける。

「うるせいな…あっ、逃げるな、こら」
「ほんとにもう…Pちゃん、こっちにいらっしゃ〜い」

 と、手を差し出してPちゃんを呼ぶ。それに答えて、Pちゃんが駆け寄って来る。

「ぶぎーっ」

 そうあかねが言い終わるか終わらぬうちに、Pちゃんはあかねの腕の中に飛びこんでいった。

「もう、側を離れるんじゃないわよ、乱馬にいじめられるからね」
「ちくしょー…」

 ふてくされる乱馬であった。
 あかねは、Pちゃんを抱き、不満そうにぶつぶつ言っている乱馬を気にしながら、その場を後にした。
 自分の部屋に戻ろうと、廊下を歩く…ちょうど、茶の間の前まで来たところで……。

「ごめんくださ〜い」

 玄関の方から声がする。
 また……。

「ごめんくださ〜い」

 玄関に誰か来たようだ。

「はっ、はーい」

 奥の方からかすみが返事をする。

「あかねー、出てくれなーい、今ちょっと手がはなせないのー」
「わかったわっ、おねえちゃん」

 あかねは、その声に答えて返事をし、廊下を早歩きで玄関へと向かう。

「こんにちは、あの…」

 玄関についたあかね、そこにいたのはあかねと同じ歳ぐらいの女の子が立っていた。

「……」
「いったい、なに考えてるのよ、ちょっとこっち来なさい」

 半分あきれた口調であかねが言う、それと同時に女の子の手を引っ張って玄関の上へと引っ張っていく。

「やっ、やめてください…」

 なにもわからずにされるがままの女の子。
 そこへ…。

「あかねー、誰か来たのか?」

 とタオルで身体を拭きながら、ちょうど通りかかった乱馬が声を掛ける。

「えっ!?」

 その声に振り向いたあかねは言葉を無くし一瞬の空白が…。

「そっ、そこにいるのは乱馬?、じゃこっちは?…」

 まだ、あかねは頭が混乱していた。

「誰だっ、おめえはっ」

 とっさに乱馬は身構えてる。

「あっ、あのー、こちらに早乙女玄馬と乱馬という親子が、お世話になっていると思うのですが……」
「いっいますけど…あなたはいったい…」
「あっ、申し遅れました、早乙女鈴馬と申します」
「……」
「さっ、さおとめー、りっ、りんまー!!」

 あかねと乱馬は顔を見合わせる。

            ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

「おやじー、どういう事だこれは!!」

 パンダの玄馬に掴みかかる。

『ちっ、ちっと待て乱馬』

 と書かれたプラカードを取り出す玄馬。
 ”バッシャーーーーーッ”
 あきれる乱馬がどこから持ってきたのか、ヤカンに入ったお湯を玄馬にかける。

「話せば長くなるが…そう、あれは今を去る事15年前…」

 と元へ姿を戻どし、話しだす玄馬。

      ・
  ・
(省略(^_^;))

      ・

「なにー、じゃあ、本当に俺の妹だっていうのかよ!!」
「すまん、乱馬、わしもすっかり忘れとったわい、わっははは」
「忘れてただとー……しょうがねぇ、今更おやじを責めてもどうにもならねぇからなっ」

 乱馬は、一度は殴ろうとしたが、自分の父親に今更ながら呆れてしまったようだった。

「ふーん、それで乱馬そっくりだったんだー」

 玄馬と乱馬のやり取りをいつものことと思いながら、妙に納得したよう鈴馬のほうを見ながらあかねが言う。
 そうなのである、鈴馬は女の時の乱馬と瓜ふたつ、双子と言っても誰も疑わないことだろう。

「ところで鈴馬ちゃん、いったいなにしに来たの?」

 と廊下でPちゃんと遊んでいる鈴馬に、素朴な疑問を投げかけるあかね。

「あっ、はい……実は……」

 あかねの言葉に我に返った鈴馬が話始めた。


              < つづく… >

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
           [ 参考:らんま1/2((C)高橋留美子・小学館)]


#6096/6101 るーみっくわーるど
★タイトル (MDD51557) 91/ 4/17 6:25 (148)
リレー小説>「乱馬に妹?!」 其の弍   ねこ
★内容

「子ぶたちゃん、ちょっと待っててね。また遊んであげる。」

 そう鈴馬はPちゃんに告げ、こちら側に向きなおった。

「………ほんっとにあんたの妹なの? 性格全然違うじゃない!」
「俺は悪くねぇっ! 俺を育てたオヤジが悪いんだ!!」

 年中行事の2人の言い争いが始まった。そんな「お兄さん」を見て、鈴馬はフッと安心したような顔を見せた。

「1つ疑問なんだが、何故早乙女くん父子がここにいると解ったんだい?」

 と、早雲が切り出す。いつのまにかなびきも帰ってきているが、やはり解らないようだ。

「……みなさん、知らないんですか?」

 鈴馬は意外そうな顔を見せた。ふとしたところ何か、乱馬にソックリである。

「『パンダに変身する早乙女玄馬』と、『女の子に変身する早乙女乱馬』は、もうこの練馬区中に知れ渡っているんですよ。」

 かすみがぽむっと手を打って、

「ということは、鈴馬ちゃんはこのあたりに住んでいるの。お買い物とかで会ったことあるかもしれないわね。」

 ええ、と頷く鈴馬。それを見て、ニッコリ笑うかすみ。その笑い顔に、鈴馬は懐かしいものを感じた。

「ねぇ、同姓同名じゃないかとか考えなかったの、あんた。」
「私は疑ったんですけども、母が、『あんな馬鹿なモノに変身するのはウチの人以外有り得ないわ……。ああ、情けない!』と言ったので……」
 なびきの疑問に即座に返ってきた答えに、その場にいるほとんどの人が何度も何度も頷いた。
 そのとき、突如無表情でスッと立ち上がり、乱馬は台所の方へ行ってしまった。

「おにいちゃん……」と言いたげな表情で見つめている鈴馬を見て、あかねは心の中で、「乱馬、どうしたの……?」とつぶやいた。  場直しの為か、ぱんっ手を叩いて早雲が、

「何故ここが解ったか……は解った。けれど、鈴馬ちゃんはどうして突然、お父さんとお兄さんを尋ねたんだい?」

 と言った。一瞬ためらう鈴馬。
「ぷいーー……」

 心配そうに良牙が覗きこんだ。

「うふふ、ありがとね、子ぶたちゃん。私は大丈夫。安心してね。」

 頭を優しく撫でながら、鈴馬は話し始めた。

「母を、捜してほしいのです。」

 聞くと、2週間ほど前に、「ちょっと出かけてくる」という置き手紙を残して消えてしまったのだそうだ。会社の人のところに泊まることはよくあったそうだが、こんなに長期に渡ってというのは始めてだ……と言う。

「おじさま、おばさまが若い頃にもこういうことはあったんですの?」
「いいや、ない!(キッパリ)」

 玄馬が自信ありげに答える。

「あれは、そんな変なヤツではなかった。鈴馬を見ればわかるだろう。」

 恐縮し、真っ赤になる鈴馬。冷ややかに玄馬を見るみんな。

「クソおやじ、それじゃ俺は馬鹿丸出しになっちまうじゃねーか。」

 乱馬が帰ってきた。あかねと鈴馬が同時に同じ顔をした。

「……乱馬、何驚いてんのよ? 熱でもあるんじゃない?」
「余計なお世話だっ!」
「それでだ乱馬くん。何をしにいきなり消えたんだね?」

 早雲がどアップで迫る。のけ反りながらも後ろに隠してあった物を出しながら、

「り、鈴馬。ちょっとガマンしてくれなっ!」   ………じょぼぼぼ!
「お、おにーちゃん熱いっっっっ!!!」

 耐えきれなくて鈴馬が叫ぶ。みんな、感づいたようである。

「うーん、変わんねーなあ。よし、次は……」      ……バシャ!
「冷ったぁぁいっ! 非道いよおにーちゃんっ! 何でいきなりこんなことする……」

 乱馬にドバッと水がかかった。なびきである。

「こーゆーワケなのよ、鈴馬ちゃん。わかった?」
「てーめーえーなあ………(ふるふる)」

 くりっと鈴馬の方へ向かせるなびき。「らんま」は初めて鈴馬と向かいあった。


 ………………………そっくりだ・・・。


 お互いそう思った。あかねが間違えるのも無理はない。違いといったら
チャイナ服かパンツルックかぐらいなものである。髪型も、色も、外観も
変わらないのである。(乱馬のほうが、ちょっとグラマラスだが。)


「対面式」を無言でしている早乙女兄妹のところへ、
「ニイハオらんまぁ☆ デートするある☆」

 と、珊璞が『どっかん』という音とともにやってきた。被害は早雲と玄馬の頭のみで、物は壊れてない。

「あら、シャンプーちゃんお久しぶりね。元気だった?」
「あんたでも物壊さない時あるのねー。」
「……ちょーどいいわっ!」

 めずらしく、あかねは冷静(?)である。ばっと立って、珊璞をひっつかまえた。

「なにあるか、あかね。乱馬くれるのか?」
「違うわっ! この子、鈴馬ちゃんのお母さん、あんたの店に来てないかしら?」

 くるっと向きを変え、そして感心したように珊璞が言った。

「よくもここまで似てるあるね。」

 前かがみになって、鈴馬に聞く。

「鈴馬、おまえの母親どんな感じある?」

 鈴馬は未だ我に返っていない。もちろん乱馬もである。目の前に言って、手を振りかざす。やはりだめだ。

「あかね、乱馬は私が起こす。鈴馬は頼んだぞ。」
「ええ、いいけど……。」

 頬をパチパチ叩いて鈴馬をおこした。

「このお姉ちゃんが、お母さんのこと知ってるかもしれないわ。」

 パチッと目をあけて、珊璞の方をまじまじと見る。信じられないといった様子だ。一方珊璞のほうは、乱馬の耳元で……

「にゃ〜ご。」

 …………………これで終わりだった。

「私の店、猫飯店いう中華料理屋ね。おいしいからきっと入てるある。それだから、おまえの母親の特徴、おしえてくれないか?」

 周りをキョロキョロ見回したら、ちょうどかすみと目があった。にこっ?と笑ったかすみを見て、

「笑ったところが、そのお姉さんに似てます。」

 と、かすみを指差して言った。珊璞は、みんなの予想を裏切り、即座に答えた。

「その人、5日前に私の店に来てるあるね。私も笑ったときかすみだと思たある。でも………」

「普通のときは、髪の長いなびきという感じだたね。」

 ………………桜の花びらが勢いよく舞い上がった。


#6109/6113 るーみっくわーるど
★タイトル (SFD09043) 91/ 4/18 0: 5 (181)
リレー小説>「乱馬に妹!?」其の参Byあかねのいちふぁん。
★内容



 再び天道家の茶の間・・・

 「笑うとかすみでいつもはなびきか・・・う゛ーーーーん・・・」
 早雲は考え込んでいた。

 「どうしてそっかららんまくんのカオになんのかしらねー。」
 「りんまよ、なびきおねーちゃん。」
 「・・・いきつくところはおんなじでしょーが。」
 「でも違うじゃない。」
 「細かいわねー。」

 「そろそろ夜ごはんにしましょうか?」
 かすみが声をかける。

 「鈴馬ちゃんも食べていく?」
 「よろしいんですか?」
 「もちろんよ。」
 「それでは、お言葉に甘えさせていただきます・・・」
 鈴馬は礼儀正しく、おじぎをした。
 育ちの違いがあらゆる所に出ている。


 「いっそ泊まっていきなさい。家には誰もいないんだろう。」
 早雲が優しく言った。
 「あ、そういやおめー2週間もずーっと留守番やってたのか?」
 「そうよ、おにーちゃん。で、全然音沙汰がなくて・・・」

 「うん、女の子が一人じゃ危険だ。やっぱり泊まっていきなさい。」


              ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 がらがらがら。
 「ただいまぁーっ!」
 異様に元気で、それでいて妙にしわがれた声がした。

 「しまった・・・忘れてたぁぁぁ!」
 乱馬はあわてた。あのじじいに鈴馬が会ったら凄くやっかいだ。
 「り、鈴馬ちゃん、隠れて!」
 あかねが急いで声をかける。
 「え、え?いったい誰が・・・」
 「話はあと!早くあたしの部屋に!」

 だんだんだん・・・
 階段をかけのぼる音と同時に、八宝斉が茶の間に現れた。
 背中の大荷物をおろして息をつく。どうせ中身は下着エトセトラだろう。

 八宝斉はふぅ・・と息をつき、不機嫌そうに言い放った。
 「なんじゃ、騒がしいのう。出迎えもなしか・・・」
 「め、めっそうもない、行き届きませんで・・・」
 早雲が急いで謝る。

 「何かあったんじゃなかろうなーーーー・・・???」
 八宝斉はじろりとあたりを見回した。
 「あかねちゃんはどうしたぁ・・・・?」
 「あはは、あ、あかねならそのへん散歩してんじゃねぇかな、うん。」
 「散歩ぉ?怪しいのぉ・・・」

 玄馬はすかさずプラカードを出した。
 『部屋になんかいないよ』
 「そうか、部屋におるのか。」
 ぶっ。乱馬は吹きだした。

 「馬鹿かてめえはーっっっ!!!!」    ばきっ
 見事な蹴りが玄馬パンダの腹にきまった。
 『何をするかばかもん』
 ぺんぺんっ。 看板が早雲と乱馬を同時になぎ倒した。
 「何をするんだ、早乙女くん!」
 「おやじ、てめーっ!!!」
 『うるさいわい』
 もはや三人とも、見事に状況を忘れている。
 醜い混戦が始まろうとしていた。


            ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 ・・・一方、あかねの部屋では。

 「・・・ふぅ。」
 「あの・・・いったいどうしたんですか、あかねさん?」
 「妖怪よ・・・」
 「妖・・・怪?この家で昔、人が死んだとか・・・・」
 「そんなことはないんだけど・・・」
 あかねは苦笑した。八宝斉の実態は簡単には語れない。
 「妖怪」がやはり一番の適語だろう。

 「おもしろそうですね、私下に行っていいですか?」
 「え゛???おもしろそうって・・・」
 「私、妖怪とかホラーとか、そういうの結構好きなんです。」
 「や、やめといた方がいいわよ。楽しみにするようなものじゃ・・・」
 何か違う解釈をされているような気がする・・・あかねは思った。

 どどどどどど・・・
 階下で地鳴りがした。そして近づいて来る・・・
 「来たわ!鈴馬ちゃん、逃げて!」
 あかねは叫んでからはたと気づいた・・・どこへ?
 「鈴馬ちゃん、体術に自信ある?ここから飛び降りるとか・・・」
 「やったことありません・・・」
 確かに普通の女の子はあまりそういう事はしないだろう。

 こんこんと、あかねの部屋のドアを叩く音がした。
 「あーっかねちゃーん。開けるぞーい。」
 「遅かったわ・・・」
 あかねはため息をついて、鈴馬に耳元でささやいた。
 「あたしがドア守っておくから、洋服だんすにかくれててくれない?」
 「この大きさならなんとか・・・」
 「早く!えーい・・・」

 あかねはドアのとってを思いきり引いた。
 「あかねちゃん、なんで開けてくれないんじゃあ?」
 「今とりこみ中なの!」
 ドアが少し開いた状態で二人はしばしひっぱりっこをしていた。

 「うーん・・・うーん・・・」
 その間に鈴馬はなんとか洋服だんすに入り込み、小さな声でつぶやいた。
 「可愛い服がいっぱい・・・」

 二人の闘いは続く。
 「ぬぬぬぬぬぬっ・・・」
 「も、もう・・・あきらめなさいよっ!」
 階下の乱馬は何をやっているのだろう?どすばた音がするから、何となくわか
 るのだが・・・。

 「じゃ、やめた。」
 「え?」
 ぱっと、八宝斉は手を離した。勢いよく扉が閉まる。
 「きゃっ!」
 あかねはもんどりうった。慣性の法則というやつだ。
 その間に八宝斉はドアを開けた・・・

 それと同時に、鈴馬が洋服だんすを開けた。
 「今、いっちゃったんですか?・・・あ。」
 あかねの顔が一瞬歪んだ。最悪だ・・・。
 「お?お?おおおおおおおぉぉぉぉぉぉっ???????」
 八宝斉は絶叫した。
 そろそろと鈴馬に近寄っていく。
 鈴馬は、妖怪というよりただのちびなおじいちゃんにしか見えない・・・と
 思っていた。

 同時に他の人間の駆けてくる音がした。
 「じじいーっ!待てーっ!!!」
 乱馬の声だ。あかねは、遅すぎる・・・と心の中で悪態をついた。

 「むぅっ、あれはまさしく乱馬の声。と、いうことは!」
 八宝斉は飛び上がって鈴馬に抱きついた。
 「すりすりすりすりすりすりすりすりすりすりすりすりすりすり」
 「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
 鈴馬の絶叫が響いた。
 「何してんのよーっ!」
 あかねがひきはがそうとした瞬間、八宝斉は床に着地した。
 「てめえ、何しやがった!」
 乱馬も部屋に乱入する。

 「ふん・・・」
 八宝斉は周りをねめつけた。
 「な、なんだよ。」
 「この娘、らんまちゃんより胸が小さい。答えい!この娘何者じゃ!」

 八宝斉の大声が家中に響きわたった。

                            (つづく)


#6195/6197 るーみっくわーるど
★タイトル (UHF80267) 91/ 4/23 5:15 (186)
リレー小説>「乱馬に妹!?」其の四  うめりん
★内容

  騒ぎを聞きつけて、早雲、パンダ玄馬、かすみ、なびきらも、あかねの部屋
 に集まってきた。

 「ちっ、しょうがねえなあ」

  乱馬は、ボヤきながら懐に手を入れると、いきなりブラジャーを八宝斉に投
 げ与えた。まるで、犬に餌をやるように…。

 「おおー、スウィート!!」

  こちらもバブロフの犬よろしく、ブラジャーに飛び付く八宝斉。

 「今だ!!」

  乱馬が号令をかけて八宝斉に飛びかかると同時に、早雲、玄馬もすかさず八
 宝斉に殺到した。必死になって八宝斉を抑えつけようとする三人。だが、八宝
 斉はあっさりと三人の間をすりぬけ、すかさず鈴馬にとびつく。

 「いやああああ!!」

  再び悲鳴をあげる鈴馬。おまけに、八宝斉の手にはしっかりとブラジャーが
 握り締められている。

 「ったくもう…」

  情けなさそうにあかねが額に手をやる頃になって、ようやく八宝斉が逃げて
 いることに気付く三人であった。

 「いい加減にしなさい!!」

  あかねが怒声と共に、細腕に似合わぬ怪力で、八宝斉を鈴馬からひっぺがす
 と、力任せに壁に叩きつける。

 「なんの!」

  しかし、さすがは八宝斉。すかさず体を半回転させると、両足で壁を蹴り、
 今度はあかねに殺到する。

 「ブキーッ!!!」

  あかねを守ったのは、Pちゃんだった。あかねと八宝斉を結ぶ直線上に、自
 ら身を投じたのである。

 「ええい、邪魔じゃい!!」

  八宝斉がうるさげにはらいのける。良牙の時ならまだしも、子豚の姿では、
 いかんともしがたい。Pちゃんはあっけなく吹っ飛ばされた。だが、彼が稼い
 だ数瞬の時は無駄にはならなかった。床を蹴って飛び込んだ乱馬が、両手を組
 んで、真上から八宝斉に振り下ろしたのである。この一撃は効いた。八宝斉の
 小柄な体は、思いっきり床に叩きつけられれ、カエルのように伸びてしまった。

 「ふう…」

  手の甲で汗を拭う乱馬。

 「ありがとね」

  あかねの声がした。

 「別にんなこと…」

  ちょっと顔を赤らめた乱馬は、言いながら声の方を向いて、むっとした。
 あかねに声をかけられているのは、乱馬ではなくて、Pちゃんだったのである。

 「大丈夫?」

  あかねは心配げにPちゃんを抱き上げ、コブを撫でてやる。

 「けっ!」

  乱馬は吐き捨てると、鈴馬に向き直る。

 「大丈夫か?」

  乱馬は、自分では兄貴らしい貫禄といたわりをこめたつもりの声で尋ねた。

 「ええ。でも、これ、なんなの?」

  鈴馬は怯えに満ちた目で、玄馬と早雲に縛り上げられた八宝斉を見やる。

 「気にしないで。単なる妖怪よ」

  答えたのはなびきである。しかし、まあ、気にするなというのは無理な相談
 である。なんせ、鈴馬にはあかねや珊璞のような腕力も、なびきのようなした
 たかさも、かすみのような、ある種超越したものもないのだから。

 「なんなら、家に来るあるか?」

  尋ねたのは、ほとんど存在を忘れ去られ…もとい、これまで沈黙を守ってい
 た珊璞である。騒ぎの最中には近付こうとせず、一段落ついたところで、部屋
 に現われるあたり、したたかというか要領がいいというか。珊璞と入れ違いに、
 玄馬と早雲は、八宝斉を捨てに部屋を出て行った。そんな真似をすれば、あと
 が怖いのはやまやまだが、この場はそうするしかなかったのである。このふた
 りのことだから、八宝斉が怒った時には、必殺ワザの、”猛虎落地勢”で対抗
 するつもりなのだろう。

 「そんなあ、悪いです。みずしらずの人のところに」

  鈴馬が言うと、珊璞は笑って、

 「なに言うてるか。わたしは、将来鈴馬のお姉さんになるあるよ」

  と答えて、横目であかねの表情をうかがう。

 「勝手に決めるなよ!」

  思わずむっとして、何かを言いかけるあかねの機先を制するように、乱馬が
 声を荒げる。ただでさえややこしい状況なのに、こんなところであかねと珊璞
 の一戦が始まったりしたら、目も当てられない。

 「気持ちはありがたいけど、そこまで世話んなるわけにはいかねえよ。今夜は
 もう帰れ」

  珍しく毅然としていうと、乱馬は珊璞の背中を叩く。

 「わかたね。乱馬が言うなら、今日のところは帰る。再見!」

  珊璞は一同に手を振ると、おとなしく帰っていった。そう、おとなしく、壁
 を二ヶ所と塀を一ヶ所ぶちぬいただけで。

              ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


  さて、翌日である。乱馬とあかねとなびきは学校に行ってしまい、退屈した
 鈴馬は、ぶらぶらと散歩に出掛けた。これが、彼女の災難の始まりだった。

 「そろそろ学校終わる頃かな」

  鈴馬は、なんとなく風林館高校の方へと向かった。人通りの少ない裏通りに
 入った時、不意にひとりの異様な娘が眼前に現われた。

 「だ、だれですか。あなたは…」

  おびえながら、鈴馬は尋ねた。鈴馬は決して気の強い方ではないが、この場
 合、彼女が怯えてるのは、そのこととは関係が薄いだろう。よほど肝の座った
 人間でもない限り、黒いレオタードに身を固め、口に黒薔薇を加えた女が現わ
 れれば、びびるに決まっている。

 「ホーーホッホッホッホッホ!! 相変わらずおとぼけがお上手ですこと。乱
 馬様に会いたくて、ここまで来ましたが、ここで会ったが百年目。いつぞやの
 恨みを晴らしてくれますわ」

  言うなり、その女、黒薔薇の小太刀こと九能小太刀は、気合いもろとも、リ
 ボン攻撃に出た。まるで生き物のようにうねりながら襲ってくるそれをかわす
 のは、かなり運動神経の発達した者でも至難のワザだったであろう。それでも
 反射的に、鈴馬は右手をかざした。その右手にリボンが巻き付く。

 「甘いですわ!」

  小太刀は、自分と鈴馬の間でたるんでいるリボンを波打たせた。それはすぐ
 に輪に変わり、鈴馬の首に巻き付いた。小太刀の手にかかると、一見なんのへ
 んてつもない、新体操用のリボンが、恐るべき凶器と化してしまうのである。

 「きゃっ」

  短い悲鳴をあげる鈴馬。大きな声が出ないのは、恐怖よりも、なんで自分が
 こんな目に会わなくてはいけないのかという疑問が強いせいであろう。

 「それっ!」

  小太刀がすかさずその輪をしめつけにかかる。…が、次の瞬間、手応えを失
 い、小太刀はバランスを崩した。お好み焼き用のコテが飛んできて、リボンを
 断ち切ったのである。

 「乱ちゃんに何さらすんや!!」

  鋭い声がした。

                          (続く)


#6274/6293 るーみっくわーるど
★タイトル (SJH45120) 91/ 4/28 17: 7 (200)
リレー小説>「乱馬に妹!?」 その五   SAKI
★内容

  スタッと鈴馬の横に近づいた右京は小太刀と対持した。フライ返しを構え
 こめかみに汗を溜める右京に対し、小太刀は相変わらずリボンを振りながら
 奇声を発していた。

 「ホーッ、ホッホッホッホ。」
 「相変わらず、訳のわからんやっちゃな。えーか、乱ちゃん。うちが次にフ
 ライ返しを投げたら一緒に逃げるんや。」

  そう言うが早いか、3本の小フライ返しが小太刀の足元に突き刺さった。
 いや、正確には振り回しているリボンを地面に固定し封じたのだった。

 「今のうちや。」
 「え?えぇ・・・」
 「!?」

  鈴馬は状況が全く掴めぬまま曖昧な返事をし、右京に引っ張られて行った。
 また、右京も乱馬らしい人物に疑問めいたものを感じながら、取りあえず逃
 げるのだった。右京はそのまま手を引っ張りその場から鈴馬とともに消えて
 行った。

  自分の店に戻った右京は鈴馬を座らせた。そして、おしぼりを鈴馬に手渡
 し奥へと入っていった。鈴馬はおしぼりでほんのりと汗ばんだ額を拭きなが
 ら店を眺めていた。

 『私は兄さんとあかねさんに逢おうと学校に行った・・・でも・・・』

  昨日からの事態の変化に困惑し続け、今置かれている自分自信に少なから
 ぬ不安が横切った。暫くして奥から着替えてきた右京が出てきた。そして、
 鉄板に火を入れながら鈴馬の方を見た。

 「あんた・・・乱ちゃんやないやろ。」
 「え?」
 「隠さんでえぇって。一緒に逃げててわかったって。」
 「・・・」
 「まぁ、ええわ。詳しい話は後や。一枚食べていき。」

  そう言って、右京はお好み焼きを焼き始めた。鈴馬はただうつ向いている
 だけだった。そんな所へ〈ガラガラッ〉と入り口が開く音が店をこだました。
 逆光の中から懐かしい声が聞こえた。

 「あのぅ・・・」
 「お、おかあさん・・・?」

  鈴馬は声の主に向かって恐々と叫んだ。しかし、その声の主からは期待し
 た回答はかえってこなかった。だが声は鈴馬を呼んでいた。

 「よかった。鈴馬ちゃん、ここに居たのね。」
 「あ・・・、かすみお姉さん・・・。」
 「いらっしゃい。この娘、乱ちゃんに似てるけど、やっぱ知り合いなんか?」

  右京はかすみに問うた。かすみは鈴馬の横に座りながら微笑んだ。そして
 昨日からのいきさつを淡々と話し始めた。

 「そうかぁ、乱ちゃんの妹なんか。」
 「そうらしいのよ。」
 「なんか複雑そうやなぁ。でも、ええで。うちの妹になるかもしれんのやっ
 たら助けた甲斐があったもんや。」

  そして、3人が普通の会話を楽しんでいるところへ行きよいよく飛び込ん
 でくる2人組があった。

 「いらっしゃ・・・あっ、乱ちゃん。」
 「待ちなさいよ!乱馬!!」
 「よっ!腹へってんだけど何か食わせてくんないか?」
 「ええで。乱ちゃんのためやったらいくらでも焼いたる。」
 「サンキュ・・・いでっ!・・・」

  ガツンと大きな音が響いたかと思うと、乱馬の頭の上に、店の装飾である
 巨大な招き猫の置物がのっかっていた。

 「なにしやがるんだ!てめぇは。」
 「なによぉ、文句ある?」
 「・・・ったく、可愛い気のない・・・おっ、鈴馬じゃねぇか?」
 「それに、かすみお姉ちゃんまで・・・どうしたの?」

  鈴馬は2人の無茶苦茶な意味の無い喧嘩らしいものにおびえて、かすみの
 肩口に隠れていた。かすみにとっては日常茶飯事なことなので難なく話しか
 けるのだった。

 「あらぁ、2人とも相変わらず仲がいいわね。でも、あかねも女の子なんだ
 から、もう少しおとなしくならなくちゃね。」
 「だって、乱馬ったら、あたしのスカートめくろうとしたのよ。」
 「誰がてめぇなんかの。風が舞った時に偶然俺がお前の後ろに居ただけだろ
 うがっ。」
 「誰があんたの言う事なんか聞くもんですか。」
 「おめぇのそういう態度が可愛くないんだよ。」
 「なんですってぇ・・・」

  再び怒りのオーラが吹き出てきたころ、うまく右京が割って入ってきた。

 「はい、乱ちゃん。スペシャル焼きやで。」
 「ほら、あかねも座って。鈴馬ちゃんが恐がってるわよ。」

  かすみの声で2人とも鈴馬を再確認した。そして、あかねはかすみの横に
 座り、乱馬は鈴馬の隣に座った。鉄板の上にはかすみと鈴馬が食べていたご
 く普通のお好み焼きと乱馬への愛情たっぷりのスペシャル焼きの焼ける音が
 奇妙に僅かな静けさの中に響いた。

 「で、なんで鈴馬とかすみねえちゃんが居るんだ?」

  乱馬が口の中を頬張りながら聞いた。

 「あ、あたし・・・この方に助けてもらって・・・」
 「あの黒バラ女にやられそうになってたんよ。偶然、あたしが通りかかって
 助けたんや。」
 「そっか、良かったな鈴馬。」
 「はい!」

  鈴馬も少しは落ちついたらしく、また妹らしく可愛らしく答えた。

 「で、かすみお姉ちゃんはどうしてここに?」

  あかねがかすみの顔をのぞき込みながら聞いた。

 「そうそう、おとうさんとおじさまが居なくなって、鈴馬ちゃんの帰りも遅
 いから探しに出てたのよ。」
 「親父達が居なくなったって?また旅にでもいったのか?」
 「今回はそうじゃないみたいなのよ。置き手紙にもそれらしいこと書いて無
 かったし・・・」
 「そうかぁ、で、なんて書いてあったんだ?」
 「それが『妖怪を捨ててから鈴馬の母親を探す。』としか書いて無かったの
 よ。でも、おじいさんを捨てれるかしら?」

  乱馬とあかねが苦笑した。確かに八宝斉を捨てることは至難の技である。
 まして、いつもやられてばかりの早雲と玄馬である。しかし、今回は八宝斉
 の事より後の鈴馬の母親を探すということが気になった。

 「探すったって、親父達、何かあてでもあるのか?」

  乱馬は小声で独り言を言った。鈴馬によけいな心配をかけない為である。
 そして、全員が食べ終わった頃である。突然店の中に自転車で乱入してくる
 者が居た。

 「ニーハオ。乱馬と鈴馬、やと見つけたね。」
 「しゃ、珊璞っ。今日は何の用なのっ。」

  あかねが椅子から離れ身構えた。しかし、珊璞は乱馬の後ろに寄りかかり
 ちょこんと舌を出した。

 「お前には関係ないね。私、乱馬と鈴馬に用事ある。」

  そう言って、何やら小声で2人に伝えている様子であった。右京も気にな
 るので僅かながら離れて聞いていた。あかねに至っては、ああまで言われて
 自ら聞きに行こうとは意地から絶対にしなかった。

 「なにィ!」
 「ええ?本当ですか?」
 「それ、ほんまなんやな?」

  突然3人が驚きの声をあげた。

 「ウソないね。私の店で仕入れた情報、間違いない。」

  珊璞は自信をもって答えた。

 「よし、鈴馬、行くか?」
 「はい。」
 「よし、私案内するあるね。ついてくるよろし。」
 「あ、待ってんか。うちもついてく。」

  そう言って4人は飛び出していった。残されたかすみとあかねはポツネン
 と立ち尽くしていた。

 「みんな元気ねぇ。あかねも一緒に行かないの?」
 「なんであたしが・・・」
 「でも、気になるんでしょ?」
 「誰が乱馬なんか・・・え?」

  そう言って、ハッとした。かすみは微笑みながらあかねの背中をポンっと
 押した。そして・・・

 「行ってらっしゃい。」

  一言、優しく・・・、そこには今までのかすみではない、母親の面影をの
 ぞかせたかすみが立っていた。

  あかねもわだかまりの中にある、幾つもの絡まった糸が一つ解けかけたの
 か、吹っ切れた様子で大きく深呼吸した。

 「ふぅ・・・、じゃ、あたしも行ってくる。」

  そう言って入り口の光の中に溶け込むかのように飛び出して行った。かす
 みは全員を見送って、右京の店の戸を閉めた。

  春の日差しもまだ柔らかく、しかも、時折どこからともなく舞う桜の花び
 らがかすみとすれ違った。


           ※           ※

 「そうそう、お買い物して帰らないと・・・今日は何人分作ればいいのかし
 ら?お客様があるといけないからお菓子も買ってかえらないと・・・」

  独り言を言いながらかすみは歩き始めた。

 「そうだ、桜餅にしましょう。じゃあ買い物の後で猫飯店に寄って・・・」


                             その五・了



小説転載コーナーTOPへ戻る

Copyright © 1991-2001. SIG るーみっく・わーるど
このサイトで公開されている全ての文章・画像などを許可なく転載することを禁じます。